「今日は、うどんか。早く『こ』を持ってきてよ」。聞いたことがありませんか? 「こ」という言葉。
刻みネギ・おろしショウガやワサビ・ゴマ・ゆでた青菜やナス・刻んだ薄揚げ・ゴボウのきんぴら。さらにはカボチャの煮つけ・煮豆・かき揚げ。うどんを食べるとき、麺つゆの椀に入れます。間違いなく薬味。この薬味を群馬県では「こ」と呼びます。
「群馬県民は『薬味』という標準語を知らないんだろう」。こう言われたら、その人の「無知さ」を憐れみながら、諭してあげましょう。
「辞書を引いてごらんなさい」と。
広辞苑を開くと「粉(こ)」のところで、「こな」の意味の次に出てくるのが、「薬味」です。でも群馬以外で薬味を「こ」とは言いません。ですから、薬味に関する伝統的日本語文化を、唯一守り続けているのが群馬県人だということです。
◎人にやさしい食文化
家族や来客に大皿の手打ちうどんを。お腹いっぱい食べてもらって喜ぶ顔が見たいから、さまざまな「こ」を小分けして、主役のうどんに対して脇役の風情で食卓に並べたのが、奥ゆかしい群馬県人。「薬味についても、群馬には日本一の文化あり」と胸を張れるのですよ。
◎酒飲みの悪癖
ただ、自宅での夕食で、こんなバリエーション豊かな「こ」を並べて、まず一杯飲み始めると、これがいい肴になるのでありまして、ビール、日本酒と次々に。
いい気分に酔っぱらって、うどんを食べる頃には、ネギ・ワサビ・ゴマしか残っていない。酒飲みの「悪癖」ですなあ。(^_^;)