◎楽しいことがないなんて
いろんなところへ行き、いろんな人に会うたびに、「最近、楽しいことありましたか?」と聞いたりします。
「失われた20年」と言われる、不況の中のここ20年。それ以前の時代は、誰に聞いても「そうですねえ、こんな楽しいこと、いいことがありましたよ」という返事がかえってきたものです。でも、この10年、20年というもの、とくに若者世代が「楽しいことなんてあるわけないですよ」の返事ばかり。これも、今の日本社会の現実かもしれません。
ですから、僕自身、楽しいことがあっても口にすることを控える傾向にあります。
◎西平井で講演
昨日、実家のある藤岡市西平井の公民館で講演してきました。
戦国時代に、平井城という城があり、関東官僚・上杉氏が支配して、人口8万人の城下町として栄えていたという資料があります。
当時の関東一番の大都市・鎌倉をしのぐという人口規模です。
つまり「日本株式会社」の本社が京都(室町幕府)。重要な営業エリアの関東を統括する「関東支社」が鎌倉。その関東支社を補佐する第二支社が、藤岡市の平井地区だったって話。
そんな「資産」を生かしながら「群馬の逆襲、西平井の逆襲」をすすめようというテーマです。
その冒頭で、「最近、楽しいことありました」と誰もが言えるような雰囲気を取り戻そうと主張。
僕自身の楽しいこととして、
1 歌集を出版した友松稔さんの奥様からいただいた「たくわん」があまりにもおいしくて、このところ、ご飯・汁・たくわんの「一汁一菜」の食事に喜びを見出していること。漬物やご飯の威力を再認識できたことがうれしい。汁は「具だくさんのけんちん汁」みたいな豪華なものですね。
2 明和県央の女子ラグビー部員・須田澪奈さんとラグビーボールでパスの練習ができたこと。なにせ、ラグビーボールを手にしたのは20数年ぶりのこと。「ビューン」と飛んでくスクリューパスも投げられたことが、うれしかった。58歳のおじさんが、17歳の女子高生と語り合っていたら、おまわりさんが飛んできそうですが、僕はインタビューの仕事。仕事冥利につきますなあ。
3 先週金曜日に、明和学園短大の「現代社会と食」の授業で、90分の講義が終わり「はい、きょうはこれで終了」と言ったら、大勢の学生から、一斉に拍手をもらったこと。
いつもは「このおじさん(だって、学生の親より僕の方がずっと年上なんですから)、なにを言っているの」といった雰囲気のまなざしが珍しくないのですが、いやあ、うれしかったなあ。
といった3点の話をしました。
冒頭は、こんな「お笑い」で。あとは「郷土愛とプライドこそ」の、いつもの僕の主張ですが、西平井のみなさんには、どう響いたことでしょうか。
この日は「講演会」ですから、終了時には100名以上のみなさんからおおきな拍手が。
冒頭に明和短大の話をしたので、「拍手を強要したことに」なってしまいましたかね(^^)/
集まってくださったみなさんは、年配の方が大部分でした。
ですから、実はこんな話もしたかったのですが、省いてしまいました。
◎粉食王国は「世界一の食文化王国」の証明
粉食王国・群馬という言い方は、群馬県庁などが率先して、「群馬の独自性のアピール」として使っています。
すると、「奥ゆかしい」と言えば聞こえがいいのですが、実際は「宣伝下手・自慢下手」の群馬県民の中には、こう言う人も出てきます。
「粉食王国? 小麦の粉を食べるのが自慢になるのか? 地味すぎないか?」
もっともっと、肉や魚を駆使した「派手な料理」でないと、インパクトに欠けるのではないか。そんな疑問です。
でも、じっくりと考えてみましょう。
小麦粉を中心に、粉食は「世界の主流」でもあります。米の粒食がアジア地域にほぼ限定される(ピラフ・リゾット・パエリアといった例外はありますが)のに対して、穀物の粉食は世界五大陸を制覇したと言ってもいい状況に間違いなし。
でも、米の粒食文化圏に住む僕たち日本人は、大昔から「米の粒食」とともに「麦の粉食」を十二分に味わってきました。米の粒食と麦の粉食を両立させてきた「度量の広さ」「考え方の柔軟さ」「料理の器用さ」を備えていたと言えるでしょう。しかも「粉を練って焼いたパン」も、「粉を練って煮た麺も」「蒸した饅頭」も、自分たちの味にしてしまいました。
その意味で、粒食王国地域における「粉食王国」を名乗ることは、食文化に関して「世界で最も自由で創造的な感性を備えた人」に与えられる名誉ある称号にほかなりません。
群馬が「日本を代表する粉食王国」であると名乗ることは、「世界屈指の食文化王国である」と高らかに宣言していることを意味しています。そういう気概が欠かせないのです。ですから「粉食王国? 地味だなあ」なんてボヤいている暇などないのです。「粉食王国」の真の意味と価値を、ほかならぬ群馬県民全員がしっかりと認識しなければ、なんとももったいないことなのですよ。
◎健康長寿と群馬の食
群馬は野菜生産王国です。キャベツ、キュウリ、ハクサイ、ネギ(冬場限定の下仁田ネギも含め)、トマト、コンニャク……。味も生産量も、全国屈指です。
日本伝統の「米の粒食」に加えて、世界中に広がった「小麦の粉食」も自前の文化に育て上げ、さらに良質の野菜が加わった「ウルトラ健康食」が群馬の伝統食文化であるわけです。その証拠が「全国屈指の健康寿命王国」という数字にも表れています。
健康寿命は、WHO(世界保健機関)が2000年に提唱した指標で、「日常生活において、自力で支障なく送ることができる期間」を示しています。日本人は世界一の長寿国で平均寿命が女性86・61歳、男性80・21歳と、ともに80歳代に乗っています(2013年)。この平均寿命は、健康でも体が不自由でも、とにかく「命ある限り」の年齢ですね。
これに対して健康寿命は「自立できる」ことが条件で、日本の場合女性73・62歳、男性70・42歳といった状況です(2010年)。これは、シンガポールについて世界2位のようです。
2013年時点で日本の女性が75・56歳で、日本の男性が71・11歳と、男女ともに健康寿命は世界1位になったという話もあります。いずれにしても、世界のトップクラスということです。
そして、この健康寿命(2010年の数字です)を都道府県別に見ると、男女総合トップが静岡県なのです。女性75・32歳(1位)、男性71・68歳(2位)です。
そこで「お茶どころ」の静岡県庁は強くアピールします。
「日本茶を毎日たくさん飲んでいるから、静岡県民は年を重ねてもみんな健康なのです。お茶こそが健康長寿の薬です」
なるほど。分かりやすい話です。お茶の効能についてはよく言われますが、さらなる研究が必要なようですね。総合2位が愛知県です。
群馬県は全国3位の健康寿命を誇ります。女性75・27歳(2位)、男性71・07歳(10位)。
ですから僕は、こんな仮説を立てています。
「日本伝統の『米の粒食』に加えて、世界中に広がった『小麦の粉食』も自前の文化に育て上げ、さらに良質の野菜が加わった『ウルトラ健康食』たる伝統食を食べているから、群馬は健康寿命がすぐれているのではないか」
群馬が誇る郷土食・伝統食を大切に継承しながら、こんな仮説を実証することもまた、「全国屈指の知名度の低さ」を誇る(?)群馬の「逆襲」につながると確信しています。
本日おみえになったみなさんも、この日本人の平均健康寿命をこえている方が大勢いるようにお見受けします。
僕の両親も、毎日、畑に出ています。ともに80代ですから、平均健康寿命を超えています。
高齢社会は「問題」なのではありません。「豊かな経験と知識、バランスのとれた判断力」にあふれた人が社会的にどんどん増えているということなんですね。
ですから、みなさんのような方々が、「西平井の逆襲」のおおいなる担い手であると思います。
こんな話もしたかったのでした。
◎立派な花をありがとうございました。
立派な花束もいただきました。お正月の花が終わったので、花屋さんに行こうかと思っていただけに、助かりました。
さっそく自宅に持ち帰って、花器ふたつに活け替えました。
西平井のみなさん、保存会のみなさん、寒い中で駐車場案内役をしてくれた平井中の同級生折茂広文くん、司会をしてくれた同級生の平井隆くん、ありがとうございました。
2016年01月25日
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